【2009年11月7日(土)】
映画「
パイレーツ・ロック」を観に行きたいと思いつつ、ウダウダやってたら、早くも午後3時。
何気につけていた居間のケーブルTVでは、日本映画専門チャネルから三島由紀夫主演の「
からっ風野郎」('60/大映/監督:増村保造)が流れ出ている。もう始まってんじゃん!!
やべぇよ、この映画、ず~っと観たいと思っていたのよ、ここ30数年来。
というわけで、途中から観始めたのだけれども、これを観終わらずに外出するわけにはいかないのよね~。なので、外出を諦めて腰を据えて観始めたってわけなのさ。
しかし、監督の増村保造にしごかれたっていう三島の演技は、どうみても大根だ。
ヤクザの2代目とういう配役も、どんなに頑張ってみてもお笑いレベル止まり。極道の台詞回しにはいささかの凄みもなく、せいぜいチンピラ風情のトークなり。育ちのよさがみえみえなのだ。
動作についてもオーバーアクション、ぎこちなさが目立つのみ。
ニヤリと不適に笑う表情は、ただただキモイばかりなり。
それにつけても、不必要に露出した上半身は、もともと虚弱体質の体をボディ・ビルで鍛えた体なのだが、これみよがしに見せつけたいのは三島の希望なのか。
うるさいくらいに上半身裸の三島の絵が続くのだ。
小男である三島のビルド・アップしたボディを、かつてそれを目の当たりに見た野坂昭如は、「茶筒のようだ」と評したものなのさ。
ラストシーン、それまでずっと黒の革ジャンに黒のポロシャツ姿だった三島が、白いジャケットに黒シャツを着こなし、八重洲のデパートで、これから生まれて来るわが子のために産着を買った直後、喘息持ちの殺し屋 神山茂に背中から狙い撃たれ、デパートの上りエスカレーターであがき続ける演技だけは、ちょっと長過ぎてくどいんだけれども秀逸だ。
この映画中の唯一のハイライト・シーンといっていいだろう。いくらなんでも、サビもない映画は映画ではないのだしね~。
しかし、目を剥きながら死する演技の三島は、ここでもオーバーアクション気味で、大根役者ぶりに拍車をかけているのだ。
ま、いずれにしてもこの映画には、<珍品>以外のバリューはありません。
さて、この作品からちょうど10年後、三島は自衛隊市ヶ谷駐屯地のバルコニーで現役自衛隊隊員に檄を飛ばし、割腹自殺で果てるのである。
数年前に、三島の近くにいた人から、「三島はもう書くものがなくなったから、ああなったんだよね」っていう言辞を聞いたことがある。それを聞いた時、さもありなんと深く納得した記憶があるんだわさ。
いまさらながらに、合掌。